妊娠・出産について 回答協力:国立成育医療研究センター
周産期・母性診療センター主任副センター長
妊娠と薬情報センター長 村島温子先生

全身性エリテマトーデス(SLE)は子どもに遺伝する病気ですか?

SLEは遺伝病といわれるほど遺伝性が強い病気ではありませんので、子どもへの遺伝を心配して妊娠・出産をあきらめる必要はありません。SLEは遺伝的要因の他に、免疫システムの異常、環境要因、性ホルモンなど、複数の要因が関連して発症すると考えられており、特定の遺伝子異常によって必ず発症するものではありません。

【遺伝子とは】

【遺伝子とは】 【遺伝子とは】

SLEがあると妊娠しにくいのでしょうか?

SLEの女性の妊娠しやすさは一般女性と同程度であることが示されています1)

1) Gasparin AA, et al. Lupus 2016; 25: 227-232.

SLE患者でも不妊治療を受けられますか?

SLEの病状が安定している場合は、排卵誘発や体外受精などの不妊治療を行うことができます2)。ただし抗リン脂質抗体陽性の患者さんでは血栓症のリスクがあるので、不妊治療を行う場合にはあらかじめ抗体のスクリーニングをしておくことが大切です。不妊治療を希望する場合は、主治医に相談してみましょう。

2) Andreoli L, et al. Ann Rheum Dis. 2017; 76(3): 476-485.

妊娠を希望していますが、どのような準備が必要ですか?

SLEは妊娠や出産にともない、病状の悪化(再燃)や妊娠合併症を発症しやすいことがわかっています。また、妊娠時の全身状態や一部の薬剤の服用は胎児に影響を及ぼすことがあります。そのため、妊娠を希望する場合は計画的な準備が必要です。

妊娠を希望する場合は、まず主治医に相談し、SLEが母体や胎児に及ぼす影響や、妊娠が可能かどうかなどの説明を受けます。妊娠・出産、育児を進めていく上では、SLEの妊娠がハイリスクであることを患者本人だけでなく、パートナーや家族も理解して受け入れていることが大切ですので、一緒に説明を受けると良いでしょう。

次に、妊娠における注意点がないかどうかの評価が行われます。具体的な項目は「妊娠を希望するにあたってどのような検査が必要ですか?」で詳述します。これらの評価で妊娠が容認されると判断されたら、病状の安定を保ちながら、胎児に影響がある薬剤の使用を最小限にして、計画的な妊娠成立へとつなげていきます。もしこの条件を満たさない場合は、妊娠をお勧めできないこともあります。その場合は避妊が必要です。

※1 肺高血圧症、高度の腎機能障害、コントロール不能な高血圧、中枢神経障害や肺出血の既往症
※2 血圧、骨粗鬆症の対策など 

橋本就子ほか. 月刊薬事 2015, 57(13): 2133-2137
村島温子. “妊娠・出産・授乳時の対応”. 全身性エリテマトーデス 診断と治療のABC 118. 田中良哉 企画. 最新医学社, 2016, p199-205. より作図

国立成育医療研究センター プレコンセプションケアセンター
https://www.ncchd.go.jp/hospital/about/section/preconception/

妊娠を希望するにあたってどのような検査が必要ですか?

SLE患者さんが持つ一部の自己抗体は妊娠経過や胎児に影響を及ぼす可能性があるため、妊娠を希望している、もしくは妊娠中の患者さんに対しては、一般的な検査のほかに下記の抗体を持っているか調べる血液検査が行われます。このほか、BMI、血圧、血糖値、甲状腺機能や骨粗鬆症などの評価も行われます。

抗リン脂質抗体

抗リン脂質抗体には、抗カルジオリピン抗体やループスアンチコアグラントなど種々の抗体があります。これらの抗体を持っている患者さんは胎盤の形成に障害が起きたり胎盤に血栓が生じたりして胎盤機能不全になることがあり、流産や早産、胎児発育不全、妊娠高血圧症候群などのリスクが高くなります。

抗SS-A抗体

抗SS-A抗体が陽性の患者さんから生まれた赤ちゃんには、新生児ループスといって顔に紅斑が出たり、不整脈が出たりすることがあります。赤ちゃんに移行した抗体は生後半年以内に消失するため症状のほとんどは一過性ですが、不整脈(特に先天性心ブロック)には注意が必要です。先天性心ブロックの発生は稀ですが、この抗体が陽性であった場合にはかかりつけの産科医 に相談しましょう。

妊娠中でも使用できるSLEの治療薬について教えてください。

お薬を飲んでいなくても、一定の確率で先天異常や流産が起こることが知られています。流産や先天異常の自然発生率はそれぞれ15%、3%ほどです3)。この自然発生率を明らかに上昇させないお薬であれば、妊娠中も使用可能です。ご自身が服用している薬に関して気になることがあれば、まず主治医へ相談しましょう。そのほか、「妊娠中や授乳中の薬剤の安全性について、相談できるところはありますか?」にある専門の相談機関を利用することもできます。自己判断で薬を中止したり変更したりしてしまうと病状の悪化につながるため、医師の指示通りに服用を続けることが大切です。

3) 村島温子. “妊娠・出産・授乳時の対応”. 全身性エリテマトーデス 診断と治療のABC 118. 田中良哉
企画. 最新医学社, 2016, p199-205.

妊娠中や授乳中の薬剤の安全性について、相談できるところはありますか?

主治医や産婦人科の医師、薬剤師に相談するほか、次のような専門の相談機関で妊娠中や授乳中の薬剤使用に関する情報を入手することができます。

国立成育医療研究センター「妊娠と薬情報センター」
https://www.ncchd.go.jp/kusuri/
虎ノ門病院 産婦人科「妊娠と薬」相談外来
https://www.toranomon.gr.jp/departments/c_other/obstetrics_gynecology/schedule.html
「全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ(RA)、若年性特発性関節炎(JIA)や炎症性腸疾患(IBD)罹患女性患者の妊娠、出産を考えた治療指針」
https://ra-ibd-sle-pregnancy.org/patient_toward/index.html

出産後にはどのような注意が必要になりますか?

出産後は赤ちゃんの抱っこ、おむつ交換、授乳、入浴など慣れない育児に多くの労力を必要とし、心身ともに大きなストレスがかかります。育児による疲労でSLEを悪化させないよう、家族や周囲の人の理解・協力を得て、無理をせず十分に休息をとることが大切です。ベビーシッターや自治体が提供する育児サポートサービスなども利用するとよいでしょう。そして通院や治療を中断せずにしっかり継続することも大切です。

SLEの治療を続けながら、母乳で育てることはできるのでしょうか?

SLEの治療中も母乳育児は可能です。しかし、一部の薬剤で授乳中に使用できないものもあります。治療に適した薬剤の種類や量は患者さんによって異なるため、主治医に相談しましょう。また、「妊娠中や授乳中の薬剤の安全性について、相談できるところはありますか?」も参考にしてください。

最終更新日:2019年4月25日 SAJP.HYCH.19.03.0808

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